はじめましての、あなたへ ー家族が病気になったときー

脳疾患により障害をもった家族との日々

最初にかけた言葉

青ざめた表情をしながら

ひたすらに手術が終わるのを待つ

 

母の手には医者から図解付きで説明されたメモ

くも膜下の症状のレベル、最高度の「5」の数値が書かれていた

 

 

祖母は90歳を超えているのに

9時間ずっと病院の待合室にいる

 

母が散歩させたり

飲み物や食べ物を飲み食べさせて

過ごしていたが

 

二人ともかなり疲労が溜まっていたようだった

 

ほどなくして、手術が終わり私たちは呼び出された

集中治療室のような所に通される

 

そこでやっと、叔父に会えた

 

私たち家族が、最初にかけた言葉

 

「よく頑張ったね」

 

自然とこの言葉が全員から出てきた

叔父の目尻には、うっすら涙のあとが残っていた

相当の痛みだったのだろう

 

頭蓋骨を開けて手術した叔父は

髪を全て丸刈りに、そしてたくさんの管が繋がっていた

 

でも、身体は暖かかった

幸いにも、一命は取り留めたのだ

 

安堵としかし大きな不安が入り混じった中

私たちはなんども叔父の身体をさすった

 

頑張った、よく頑張ったねと

 

ひとまずその日は帰宅することにしたが

残された家族の空気は重く

家の中は、慌てて飛び出した今朝の痕跡がしっかりと残っていた

 

私はその日夢をみた

叔父が、普通にいつも通り、居間で過ごしている夢だった

 

なんだ、いつも通りじゃんと、

私はただいつもの風景を眺めている、夢だった